昭和五十七年 六十九歳

おちこちに咲く山茶花も県境
動かざる晩秋の湖静かすぎ
冬の窓影を写して小鳥去る
物書きも食も炬燵を出でやらず
月食の夜は青く冴え寒きびし
水仙花凛と美しくありたけれ
鯉生簀氷をたゝき割りしかな
ガラス窓おぼろの月を容れにけり
花冷えや僧不在なり新築寺
葉桜や木の葉がくれに尼僧行く
山桜峠の道に雪残る
梅雨にぬれ吾が名も並ぶ亡夫の碑
天を突く峠の杉や山女釣り
夏帽子久米島と言う小島行き
白砂とブルーの海よサングラス
広々と青田の径は匂うなり
こうろぎも声に大小有るらしき
秋風や各駅停車好きな旅

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